Maile (Alyxia stellata)
香り高い、最も伝統的なレイの素材として、古来より王族から庶民まで親しまれてきたマイレ。今日でも、フラ、冠婚葬祭、卒業式、授賞セレモニーなどにおいては、マイレのレイが欠かせない。
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日本語名 | — |
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ハワイ語名 | maile |
英語名 | — |
学名 | Alyxia stellata |
分類 | キョウチクトウ科(Apocynaceae) |
その他 | ハワイ在来種(indigenous) |
分布
I
ポリネシア、ニューカレドニア、オーストラリアに分布する。ハワイでは在来種として主要6島に生育する。標高50~2,000mの、乾燥した開けた場所から木々が生い茂る湿った森まで、様々な植生のなかで見られる。なお本種は、近年までAlyxia oliviformisという学名の固有種として扱われていたが、現在は在来種Alyxia stellataとされている。
特徴
巻きつき性のつる植物、よじのぼり性の低木、もしくは直立した低木など、形態は様々。生育場所によって葉の形も大きさも表面の質感も異なる。葉は長さ0.7〜6cm、幅0.8〜3.5cm。対生もしくは3輪生(茎の1節に3個の葉がつく)で、同じ茎に両方のタイプが見られる。葉の表は緑色で光沢があり、裏は淡い色。葉を潰すと芳香があり、乳液状の白い液体が出る。ハワイ人は、マイレを以下の5種類に分けて識別した。
- マイレ・ハイ・ワレ(maile haʻi wale、もろいマイレ)
- マイレ・ラウ・リイ(maile lau liʻi、小さな葉のマイレ)
- マイレ・ラウ・ヌイ(maile lau nui、大きな葉のマイレ)
- マイレ・カルヘア(maile kaluhea、甘い香りのマイレ)
- マイレ・パーカハ(maile pākaha、葉先が丸いマイレ)
花は小さな筒状で、先に黄色の花弁が4枚ある。果実はオリーブに似ている。樹皮を剥ぐと芳香がある。本種の大部分に含まれるクマリン (coumarin) という有機化合物が、香りの正体である。
果実はオーマオ(ハワイツグミ)などの鳥たちの好物である。マイレの先祖は、果実を食べる鳥によって偶然東南アジアからハワイに運ばれてきたと考えられている。
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レイ
葉は、よい香りが数週間も続く伝統的なレイの素材である。マイレのレイは、古代ハワイ人が植物から作ったものとしては、もっとも初期のレイのひとつである。ただし、今日ハワイで流通しているマイレの多くは、トンガやクック諸島からの輸入品である。レイは、輪になっているものが多いが、マイレのレイは輪にしない。また、カパ布を保管する大きな容器にマイレやイリアヒが芳香剤として一緒に入れられた。
フラの神聖な植物
マイレには神秘的な力が宿っていると信じられていた。特にラカ(Laka、フラの女神)に捧げられる神聖な植物とされている。ハーラウ(hālau。フラの学校、一座。元々はカヌーを保管したりフラを練習したりするための大きな建物のこと)では、イエイエ、オーヘロ、オーヒア・レフア、キー(ティ)、パライ(パラパライ)、ハラ・ペペなどとともに、祭壇に供えられる植物のひとつである。
森のなかでは地味
レイの素材としてハワイではとても有名なマイレだが、自然のなかで自生している姿は地味であまり目立たない。実際に筆者は、自生しているマイレを長いあいだ見つけることができなかった。ある日、ハワイの著名な野鳥写真家とカウアイ島のアラカイ湿原(Alakaʻi Swamp)をハイキングをしていたときに、彼がマイレを見つけて私に教えてくれた。その地味な姿に驚いた。こうして、一度その姿を認知して以降は、あちこちの森で簡単にマイレを見つけることができるようになった。そして今度はむしろ、想像以上に広い地域のあらゆる種類の森にマイレが生育していることに、再び驚いた。きっと、それまで森のなかで何度もマイレを見てきたが、それらがマイレだと知らずに素通りしてきたのだろう。
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