ノホアヌ(ヒナヒナ)

Nohoanu (Geranium spp.)

ノホアヌ(ヒナヒナ、Geranium cuneatum subsp. tridens)

カウアイ島、マウイ島、ハワイ島の標高が高い山間に生育する低木。6種あり、いずれもノホアヌ(nohoanu)、またはヒナヒナ(hinahina)と呼ばれる。

日本語名
ハワイ語名 nohoanu、hinahina
英語名
学名 Geranium arboreum *
Geranium cuneatum
Geranium hanaense *
Geranium humile
Geranium kauaiense *
Geranium multiflorum *

* 絶滅危惧種(endangered)
分類 フウロソウ科(Geraniaceae)フウロソウ属(Geranium)
その他 ハワイ固有種(endemic)

分布

E*

ハワイ固有種。カウアイ島、マウイ島、ハワイ島に分布するが、種によって分布する島々は異なる。

フウロソウ属

ノホアヌが属するフウロソウ属(Geranium)は、300種以上からなり、温帯や、熱帯の山地などに広く分布する。ハワイには、6種の固有種と5種の外来種がある。普通は一年草か多年草だが、ハワイの固有種群は低木である。ハワイの6種の固有種うち、4種は絶滅危惧種。

特徴

種によって特徴は異なるが、葉のつきかたが互生であることや、花弁が5枚あることなどは共通している。

1. Geranium arboreum

【写真1】Geranium arboreum | Photo by Forest & Kim Starr

高さ2~4mの低木。葉は長さ4~7cm、幅2.5~4.5cm、表面には両面とも毛が生えている。葉の縁には、左右それぞれに8~14個のギザギザがある。ノホアヌには、葉を覆う毛のため葉全体が灰色がかってみえる種も複数あるが、本種の葉は緑色。花は鈍い赤紫色。マウイ島固有種。主な生育地は、ハレアカラー(Haleakalā)北部と西部。標高1,520~2,150mの亜高山帯低木林に自生する。絶滅危惧種。【写真1】

2. Geranium cuneatum

高さ0.3~1mの低木。葉は長さ2.5~5cm、幅0.7~1.2cm。葉の縁にはギザギザがある。葉は無毛のものと毛で覆われているものがある。毛が多い場合は、葉全体が灰色のように見える。花は白色もしくはクリーム色で、しばしば花弁に紫色の筋が入るほか、基部が紫色のものもある。花弁は狭倒卵形で、長さ9~12mm。マウイ島のハレアカラーとハワイ島に分布する。標高1,480~3,250mの低木林や森に生育する。

4つの亜種に分類され、1つはマウイ島のハレアカラーに、3つはハワイ島に分布する。ハレアカラーの亜種(Geranium cuneatum subsp. tridens)は、葉の先端に3つのギザギザがあるのが特徴。

3. Geranium hanaense

高さ30~50cmの低木。地面を低く這うように伸びる。葉は長さ1.5~5cm、幅0.8~2cm、両面とも毛で覆われていてる。葉の先端には3~5個のギザギザがある。花は白色で、普通は紫色もしくは赤紫色の縞がある。花弁は狭倒卵形で、長さ8~15mm。マウイ島固有種。ハーナ森林保護区(Hāna Forest Reserve)の、標高1,670~1,680mの沼地に生育する。絶滅危惧種。

4. Geranium humile

地面を低く這うように伸びる低木。葉は長さ1.5~2.6cm、幅0.9~1.5cm、裏側はたくさんの毛で覆われていて灰色に見える。葉の先端には5~7個のギザギザがある。花は白色で、紫色の筋がある。花弁は狭倒卵形もしくは倒卵形で、長さ10~15mm。マウイ島固有種。西マウイの標高1,490~1,770mの沼地に生育するが、数は少ない。

5. Geranium kauaiense

地面を低く這うように伸びる低木。葉は長さ1.1~2.9cm、幅0.4~0.8cm、裏面は毛で覆われている。葉の先端には4~5個のギザギザがある。花は白色で、紫色の筋がある。花弁は狭倒卵形で、長さ9~16mm。小種名kauaienseが示す通り、カウアイ島固有種。アラカイ湿原(Alakaʻi Swamp)とワイアレアレ山(Mount Waiʻaleʻale)の、標高1,220~1,250mの沼地にわずかに生育する。絶滅危惧種。

6. Geranium multiflorum

【写真2】Geranium multiflorum | Photo by Forest & Kim Starr

高さ1~2m、枝の多い低木。葉は長さ4.5~7.0cm、幅1.5~3.0cm。葉の表側は緑色で無毛もしくは有毛、裏側は毛で覆われている。葉の縁には、先端から少なくとも葉の長さの1/3位まで(しばしば縁全体に)7~15個のギザギザがある。花は白色で、紫色の筋が入り基部が紫色の場合が多いが、ピンク色や濃い紫色の花もある。花弁は狭倒卵形で、長さ10~15mm。マウイ島固有種。ハレアカラーの標高1,580~2,450mの、草原、湿潤な森、亜高山帯の低木林に生育する。絶滅危惧種。【写真2】

名前の由来

ノホアヌ(nohoanu)は、直訳すると「寒い住処」となる(noho=住処。anu=寒い)。6種とも標高が高い山間に生育することに由来すると思われる。

もう一つの総称であるヒナヒナ(hinahina)には、「銀色の」や「グレーの髪の」などの意味がある。いくつかの種の葉が白い毛に覆われているため銀色に見えることからつけられた名前に違いないが、同じようにヒナヒナと呼ばれる全く別の植物もいくつかある。

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