ʻOhe (Schizostachyum glaucifolium)
タケの仲間。ハワイの人たちの間では、「common bamboo(普通の竹)」であるBambusa vulgarisに対して「native bamboo(在来の竹)」と呼ばれることもあるため、ハワイの在来種だと思っている人が多いが、ポリネシア人が大昔に持ち込んだものとするのが通説である。
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日本語名 | — |
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ハワイ語名 | ʻohe |
英語名 | — |
学名 | Schizostachyum glaucifolium |
分類 | イネ科(Poaceae) |
その他 | ポリネシアン移入種(Polynesian introduction)※在来種(indigenous)の可能性あり |
分布
P
原産地はインドあるいはインドネシアと考えられているが、詳しくは不明。ハワイには古代ポリネシア人が持ち込んだとされている一方で、在来種である可能性もあるといい、謎が多い。ハワイの他にもフィジー、サモア、タヒチ、マルケサスなどで生育が確認されている。ハワイではカウアイ島、オアフ島、モロカイ島、マウイ島、ハワイ島に自生している。標高60~275mの川沿いや湿潤な谷などでみられる。
Schizostachyum
オヘが属するSchizostachyum属は約25種からなり、中国、インド、マレー諸島、フィリピン、タヒチ、ニューギニア、マダガスカルなどに分布する。
特徴
高さ9~12m、直径8cmに成長し、大きな藪や林を形成する。木質化した茎(稈)は緑色、もしくは黄色に緑色の縞模様。葉は大きなもので長さ30cm、幅3.5cm。中央脈は白っぽい。葉の縁は硬くて鋭い。
利用
竹が日本でも古来から様々なものに利用されてきたのと同じように、ハワイでもニウ(ココヤシ)と並んで大変利用価値の高い植物であった。古代ハワイ人は、火に管から息を吹きかけて燃焼を促すためにオヘの稈を使った。また、縦に割ったオヘを繋げて筧(かけい)をつくり、農作物に水をひいたりもした。他にも、釣竿、建材、はしご、帆柱、ソリ、水筒、柔らかいものを切るためのナイフ、針、カパ布の線付け・模様付け、マット、うちわ、籠、家具、農機具など、様々なものが作られ幅広く利用された。
またオヘからは、オヘ・ハノ・イフ(ʻohe hano ihu)と呼ばれる鼻笛や、打楽器も作られた。フラでは、踊りに合わせてオヘの2本の稈を叩いて音を出すオヘ・カーエケエケ(ʻohe kāʻekeʻeke)や、縦にいくつもの切れ目が入って叩くとシャンシャンと音がなるプーイリ(pūʻili)が使われる。
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ヒナの伝説
ハワイの女神ヒナに関する伝説の一つに、以下のようなものがある。ヒナがタヒチから持ってきたオヘを植えたところ、息子のマウイがそれを触ろうとした。ところがオヘの鋭い茎でマウイは手を怪我してしまった。そこで母のヒナは、神力でもってオヘの茎の外側と内側をひっくり返した。そのため、現在のオヘは、指に刺さるような繊維が多い部分は茎の内側にあり、外側は滑らかになっているのだという。
四大神カーネの化身
オヘは、クー(Kū)、ロノ(Lono)、カナロア(Kanaloa)とともにハワイ神話の四大神とされるカーネ(Kāne)のキノ・ラウ*のひとつだと信じられていた。
*kino lau。神が動物や植物に変身した姿のこと。
カーネオヘ=竹男
オアフ島の北西部、観光客にも人気の町カイルアの西隣に位置するカーネオヘ(Kāneʻohe)という地名は、直訳すると「竹男」である。これは、この土地に住んでいたある女性が、乱暴者であった夫のことを「オヘのナイフのような男だ」と表現したという故事に由来するという。
その他のオヘ
ハワイ語名のオヘ(ʻohe)は、本種だけをさす名前ではなく、タケ類全般をさす総称である。ただし、ジョインビレア科の在来種Joinvillea ascendensや、ウコギ科の固有種Polyscias sandwicensisも、同様にオヘと呼ばれるので、注意が必要である。
また、ホース、パイプ、チューブなど、長い管状のものも全てオヘと呼ばれる。例えば、山地に生育するナウパカ類の中でチューブ状の花をつけるScaevola glabraは、オヘ・ナウパカ(ʻohe naupaka)と呼ばれる。
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