ウィリウィリ

Wiliwili (Erythrina sandwicensis)

ウィリウィリ(Erythrina sandwicensis) ウィリウィリ(Erythrina sandwicensis) ウィリウィリ(Erythrina sandwicensis)

ふしくれだった短い幹をもつ美しい木。乾燥した森のなかで、遠目からもっとも簡単に識別できる木である。かつては、ハワイの乾燥森の生態系を構成する主要な木のひとつであったという。現在これらの乾燥森は、キアヴェで覆われていることが多い。

日本語名
ハワイ語名 wiliwili
英語名 Hawaiian coral tree
学名 Erythrina sandwicensis
分類 マメ科(Fabaceae)デイコ属/デイゴ属(Erythrina)
その他 ハワイ固有種(endemic)

分布

E

ハワイ固有種。主要なすべての島々に分布する。標高600mまでの、リーワード(leeward、貿易風の風下側)の乾燥した森に自生する。溶岩地帯にもみられる。

特徴

高さ15mになる落葉性の木本。樹皮は紙のような質感で、浅い亀裂があり、赤みを帯びている。幹と枝には円錐形の突起がある。葉は羽状の三小葉。先端の小葉は長さ4~10cm、幅6~15cmで、横に長い。横側の2枚の小葉は卵形で、長さ4~8cm、幅4~9cm。通常、花をつける前に落葉する【写真1】。春から夏(7月)にかけて枝の先に花をつける。花冠は一般的にはオレンジ色だが、たまに黄色、白色、淡い緑色ものもある【写真2】。豆果には1~3個の種子がある。種子は赤色や黄色っぽいオレンジ色で、長さ1.5cm、幅1cm【写真3】。

ウィリウィリ
【写真1】落葉時のウィリウィリ | Photo by Forest & Kim Starr
ウィリウィリ
【写真2】花をつけたウィリウィリ | Photo by Forest & Kim Starr
ウィリウィリ
【写真3】ウィリウィリの豆果と種子 | Photo by Forest & Kim Starr

名前の由来

ウィリ(wili)には、ねじる、うねる、曲げるなどの意味がる。豆果が開いて種子を出すときに豆果がねじれる様子からついた名前だという。

デイゴ属(Erythrina)

ウィリウィリが属するデイゴ属は、115種からなり、南アメリカ北部、カリブ海の島々、アフリカ、アジアなどの温帯から熱帯にかけて広く分布する。ハワイのいくつかの植物園では、90種以上に加え多くの交配種が栽培されている。

ウィリウィリは、タヒチ固有種のErythrina tahitensisと、南アメリカ北部および西インド諸島に広く分布するErythrina velutinaにもっとも近縁だとされている。

ハワイで自生するのはウィリウィリの1種のみ。デイゴ(Erythrina variegata)とアメリカデイゴ/カイコウズ(Erythrina crista-galii L.)の2種は街路樹として広く植えられているが、野生化はしていない。

属名のErythrinaは、ギリシア語で赤を意味する「eryhros」が語源。デイゴ属の多くの種の花が赤色であることに由来する。

デイゴ

沖縄県の県花として日本でも広く知られるデイゴ(梯梧)は、前述したようにハワイでも多く植えられている。英語ではtiger’s-clawと呼ばれる。直訳すると「虎の爪」という意味。ウィリウィリに似ているため、ハワイでは、ウィリウィリ・ハオレ(wiliwili haole、外国産のウィリウィリ)とも呼ばれる。

利用

カヌー

ウィリウィリの木材は、バルサ材のように軽くて柔らかい。ハワイの伝統的なカヌーには、船体が横転しないように舷外浮材(アウトリガー)がつけられるが、このアウトリガーには今日でもウィリウィリの材が使用される。材は、漁に使う網の浮きにも使われた。

サーフボード

昔のハワイでは、サーフボードにもウィリウィリ材が使われた。

ハワイの伝統的なロングタイプのサーフボードのなかでも特に長いものはオロ(olo)と呼ばれる。オロは、長さ6mに達するものもあったという。これらの長いサーフボードには主にウィリウィリの木材が使われた。その他のほとんどのサーフボードはコアの材で作られたが、とても重く、持ち運びが大変だったという。

レイ

種子をつなげてレイが作られる。ジェームス・クック(Captain James Cook、1728–1779)が1778年にハワイを始めて訪れたときには、現地のハワイ人からウィリウィリの種子のレイが贈られたという。

魚の名前にもウィリウィリが?

ハワイの岩礁に生息するチョウチョウウオの仲間に、ウィリウィリが名前の由来になっている魚が2種ある。

ひとつは、ハワイ固有種のChaetodon miliaris(英語名:millet butterflyfish)。ハワイ語でラウウィリウィリ(lauwiliwili)と呼ばれる。直訳すると「ウィリウィリの葉」という意味である。確かに、体の形がウィリウィリの葉に似ている。

もうひとつは、太平洋やインド洋に広く生息するフエヤッコダイ(Forcipiger flavissimus)で、ハワイ語名はラウウィリウィリ・ヌクヌク・オイオイ(lauwiliwili nukunuku ʻoiʻoi)。直訳すると「口が鋭いウィリウィリの葉」という意味になる。

ちなみに、『ハワイ州の魚』として認知度が高いタスキモンガラ(Rhinecanthus rectangulus)は、ハワイ語でフムフムヌクヌクアープアア(humuhumu-nukunuku-ā-puaʻa)と呼ばれる。このフムフムヌクヌクアープアアが、もっとも長いハワイ語の魚の名前だとされている場合が多いが、それは誤りで、実はもっとも長いハワイ語の魚の名前は、このラウウィリウィリ・ヌクヌク・オイオイである。

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