ʻUlu (Artocarpus altilis)
古代ポリネシア人によってハワイに持ち込まれた、いわゆるカヌープラントと呼ばれる有用植物のひとつ。
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日本語名 | パンノキ |
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ハワイ語名 | ʻulu |
英語名 | breadfruit |
学名 | Artocarpus altilis |
分類 | クワ科(Moraceae)パンノキ属(Artocarpus) |
その他 | ポリネシアン移入種(Polynesian introduction) |
分布
P
ハワイでは自生しているとはみなされていないが、標高が低い谷などで見ることができる。ウルの木が生えている場所は、昔のハワイ人の居住地跡であることが多いようだ。ミクロネシアが原産と考えられていられるが、昔から重要な食料源として各地に植えられてきたため、現在では太平洋の島々に広がっている。
特徴
樹高は通常12~15mだが、20m以上になる場合もある。幹は最大で直径約2m。葉は幅15~20cm、長さ20~50cmで、光沢がある。果実は緑色で、直径15~60cmの卵形もしくは球型【写真1】。
利用
高木のウルは、葉がよく茂った林冠層を形成するので、下層に育つイモ類、アヴァ(カヴァ)、ノニ、マイア(バナナ)などの有用植物のシェルターになった。
ウルの実は、古代ハワイでは主に家畜のブタの餌であったというが、実をカロ(タロ芋)と一緒にすりつぶしたペースト状の食べ物はウル・ポイ(ʻulu poi)と呼ばれ、今日でも作られている。マルキーズ諸島では、ウルの実は今日でも重要な食料で、ウルの実をすりつぶしたものを醗酵させてチーズのようなものを作り、それにココナッツミルク、海水、ライムジュースなどをかけて食べるそうだ。
昔のハワイ人は、軽いウルの木材を使ってサーフボードを作った。他に、カヌー、パフ(pahu)と呼ばれる太鼓、家のドア、ポイを作るための台などにも、ウル材が使われた。ボウルなどの食器やククイの実を磨くときには、ウルの包葉をサンドペーパーとして使った。
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ウルの鳥もち
ウルの小枝を折ると、粘着性の乳液が出る。昔のハワイ人は、この乳液を木の枝などに塗布して“鳥もち”にしていた。鳥が捕まると、きれいな羽根を数本だけ抜いて、鳥の足についたウルの粘液をククイオイルできれいに取り除いて、鳥は再び自然へと放した。そうして集めた羽根からは、アリイ(aliʻi、貴族)のための豪華でカラフルなマントやレイが作られた。
ハワイアンキルトのモチーフ
ウルは、豊穣と裕福の象徴とされ、ハワイアンキルトの最も伝統的で人気のあるモチーフのひとつである。伝承では、初めて作るキルトのモチーフにウルを選ぶと、その人は食べ物に恵まれた裕福な人生を送ることができるとされている。
クー神の生まれ変わり?
ハワイの伝説では、ハワイ人の女性と結婚してやがて昇天したクー神(Kū)の体からウルが生えてきたとされている。ハワイ四大神の一柱であるクーは、魔法の力を持っていたので、ウルにも魔力が宿っていると考えられていたそうだ。
その他
1789年の『バウンティ号の反乱』で有名な英国船バウンティ号(艦長ウィリアム・ブライ)のこのときの航海の目的は、ウルを労働者たちの食料にするために、タヒチから西インド諸島に運ぶことであった。当時は3~4本のウルで労働者1人の1年分の食料がまかなえるとされていた。
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