ナウパカ・カハカイ(ビーチ・ナウパカ)

Naupaka kahakai (Scaevola sericea)

ナウパカ・カハカイ(ビーチ・ナウパカ、Scaevola sericea) ナウパカ・カハカイ(ビーチ・ナウパカ、Scaevola sericea) ナウパカ・カハカイ(ビーチ・ナウパカ、Scaevola sericea)

ハワイの海岸沿いで最も多く見られる植物のひとつ。おそらく、最も簡単に見つけることができるハワイ在来の植物である。ハワイのビーチを歩けば、ほぼ必ずと言っていいほど本種の茂みを目にすることができるだろう。

日本語名
ハワイ語名 naupaka kahakai、naupaka kai、huahekili、aupaka(ニイハウ島)
英語名 beach naupaka(注:naupakaはハワイ語)
学名 Scaevola sericea
分類 クサトベラ科(Goodeniaceae)クサトベラ属(Scaevola)
その他 ハワイ在来種(indigenous)

I

太平洋とインド洋の、熱帯から亜熱帯にかけての海岸近くに広く分布する。ハワイでは、在来種として主要6島すべてに自生する。北西ハワイ諸島でも、ガードナー尖礁、ネッカー島、ニホア島を除いたすべての島々に自生する。ハワイでは栽培もされていて、公園や道路などに多く植えられている。

特徴

高さ3mまでになる低木。葉は光沢があり、長さ5~20cm、幅5~7cmで、縁がわずかに丸まっていることが多い。25mmほどの小さな花は白色で、中央部はクリーム色。花弁に紫色の縞がある場合もある。果実は白色で、長さ10~13mm、幅5~7mm。

果実は海水に浮くことができ、長期間漂流したあとでも、漂着した地で発芽する。このことが、本種が広範囲に分布している理由のひとつと考えられる。

クサトベラ属

ナウパカが属するクサトベラ属(Scaevola)は、100種以上からなり、多くはオーストラリア原産。属名のScaevolaは、「左利き」や「不器用でぎこちない」などの意味があるギリシア語のscaevusからきている。クサトベラ属に共通する、半分だけ咲いたような“ぎこちない”花の姿に由来すると思われる。

ハワイには9種あり、すべてナウパカと呼ばれる。9種のうち、本種(ナウパカ・カハカイ)のみはハワイ以外にも自然分布する在来種で、残りの8種はすべて固有種。8種の固有種のうち、山地に生育する6種は総称してナウパカ・クアヒヴィ、またはマウンテン・ナウパカと呼ばれる。クアヒヴィ(kuahiwi)は高地という意味。残りの2種は、それぞれドワーフ・ナウパカ(dwarf naupaka)、オヘ・ナウパカ(ʻohe naupaka)と呼ばれる。オヘ・ナウパカ以外のナウパカの花は、扇状で、まるで真ん中から半分にスライスしたような形をしている【写真1】。

ナウパカ・カハカイ
【写真1】ナウパカ・カハカイの半円形の花

名前の由来

ハワイ語名にあるカハカイ(kahakai)には、海辺や浜などの意味がある。また、果実が雹(ひょう)に似ていることから、フアヘキリ(huahekili、雹)とも呼ばれる。ニイハウ島ではアウパカ(aupaka)とも呼ばれる。

適応放散

ハワイ固有の動植物の重要な特徴として、大昔にハワイにたどり着いて定着した一種が、ハワイの多様なニッチ(生態的地位)に適応してさまざまな固有種に分化していく現象が多く見られるということがある。この現象は、適応放散(adaptive radiation)と呼ばれ、ハワイではハワイミツスイ類の適応放散がよく知られている。本種以外の8種のナウパカのうち多くが、本種から分化したものと考えられていて、適応放散の一例である。

伝説のなかのナウパカ

ハワイには、ナウパカにまつわる伝説が多い。ナウパカの、半分だけ咲いているような不思議な花の形と、海と山とで生育する種類が別れていることなどが、古代ハワイ人にとって想像をかき立てさせる植物であったようである。以下、二つの伝説を紹介する。

ナウパカの伝説:喧嘩をした男女の話

ある伝説では、ナウパカの花は今のような半円型ではなく、完全な丸い花だったという。ある恋人同士が喧嘩をして、怒った女がナウパカの花を真ん中から半分にちぎってしまった。女は、半分に引き裂かれていない完全な形のナウパカの花を男が見つけてくるまで、男を許さないと決心した。

ところがそのときに、神々がすべてのナウパカの花を半分に引き裂いてしまった。結局、男は完全な形の花を探すことができずに、傷心によってこの世を去ってしまった。今日でも、ナウパカの花は半円型のままであるという。

ナウパカの伝説:火山の女神ペレの話

ある村に、見知らぬ美しい女がやってきた。女は、村の若い男に恋心を抱いた。若者は、しばらくはその女と仲良くしたが、やがて、昔の恋人のところに戻った。

実は、この見知らぬ女の正体は、恐ろしい火山の女神ペレ(Pele)だった。怒り狂ったペレは、二人を追いかけて二人の仲を引き裂いてしまった。ペレは、溶岩流に乗って若者を山に追いつめた。ところが、他の神々が若者を哀れに思い、彼の姿をナウパカ・クアヒヴィ(マウンテン・ナウパカ)に変えた。怒りが冷めないペレは、今度は男の恋人を海岸まで追いかけた。ここでやはり神達が彼女の姿をナウパカ・カハカイ(ビーチ・ナウパカ)に変えた。

こうして恋人同士は、ペレに追われる心配はなくなったが、再び一緒になれることもできなくなった。ナウパカになった男は山で、女は海岸で、互いを思慕しながら現在でも半分の形の花を咲かせているのだという。

ナウパカの半円型の花を二つ合わせて円型にすると、雨が降るという言い伝えがある。これは、再会を喜んで泣いている恋人たちの涙の雨だと云われている。

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利用

果実は飢饉のときには人間も食べていたそうだが、味は悪く、よほど空腹でないかぎりは食べるのは難しいようだ。

オオグンカンドリとナウパカ・カハカイ

北西ハワイ諸島では、イヴァ(ʻiwa、オオグンカンドリ)がナウパカ・カハカイに巣をつくる。

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