Ipu (Lagenaria siceraria)
古代ポリネシア人によってハワイに持ち込まれたつる植物。
日本語名 | ユウガオ(夕顔)ヒョウタン(瓢箪)は本種の変種 |
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ハワイ語名 | ipu、pōhue |
英語名 | bottle gourd、white-flowered gourd |
学名 | Lagenaria siceraria |
分類 | ウリ科(Cucurbitaceae)ユウガオ属(Lagenaria) |
その他 | ポリネシアン移入種(Polynesian introduction) |
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分布
P
原産はアジアとアフリカの熱帯地域。ハワイでは栽培されているが、野生化はしていない。日当たりが良くて温暖な場所を好むため、古代ハワイ人は主に島々の南部のリーワード(leeward、貿易風の風下側)でイプを育てた。
特徴
葉は幅が広いハート形で、直径10~15cm、浅い切れ込みがあり5つに分かれている。夜に白い小さな花をつける【写真1】。
若い果実は柔らかく、細い毛で覆われている。果実の大きさや形は様々で、形は楕円形、丸形、こん棒形、曲がったもの、ねじれたものなどがある。果実は熟れると黄褐色になる。果肉は白色。種子は平べったい。
現在ハワイで栽培されているイプは、アメリカ本土かメキシコにルーツを持つ変種であり、ハワイに古くからある変種を見つけるのは困難であるらしい。
利用
実からは質の良い容器が作られ、広い用途で使用される。昔のハワイ人は、小さな実で作った容器には水や食料などを入れ、大きな実で作った容器には衣類や道具などを入れた。
ハワイ人は、イプの実を使ってさまざまな楽器も作った。小さな洋ナシ型の実からは、イプ・ホーキオキオ(ipu hōkiokio)と呼ばれる笛が作られた。また、振ってガラガラと音を鳴らす、ウリウリ(ʻuliʻuli)と呼ばれるシェイカーや、単体もしくは大きさの異なる二つのイプの実を繋げた打楽器は、今日でもフラでは欠かせないものである【写真2】。
昔のハワイ人漁師は、イプの実で音を鳴らしてサメを追いやっていたという。また漁師たちは、カヌーで海に出るときには釣り糸や釣り針をイプの容器に入れ、もしカヌーが転覆しても大事な釣り道具が沈まないようにした。
ハワイ人は果肉が苦いタイプと苦くないタイプで区別していて、苦いタイプは薬用に使った。
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イプの仲間たち
ハワイ語では、同じウリ科のスイカ(Citrullus lanatus)もイプ(ipu)、あるいはイプ・ハオレ(ipu haole)などと呼ぶ。イプ・ハオレは、「外来のイプ」という意味。
スイカがハワイに初めて移入されたのは1792年と古い。イプ・オロオロ(ipu oloolo)、イプ・プオ・カナカ(ipu puʻo kanaka)、イプ・フルフル(ipu huluhulu)などの多くの変種が作られたが、ウリ類の果実を食べるハエがハワイに移入された1910年頃から栽培されなくなった。今日では若い果実を紙や布で覆って害虫から守ることにより、ハワイのスイカ栽培は復活している。
スイカの他にも、トウガン(Benincasa hispida)、ハワイ語でイプ・アラ*(ipu ʻala)と呼ばれるカンタロープメロン(Cucumis melo var. cantalupensis)、カウカマ(kaʻukama)と呼ばれるキュウリ(Cucumis sativus)、パラアイ**(palaʻai)あるいはプー(pū)と呼ばれるセイヨウカボチャ(Cucurbita maxima)、ペポカボチャ(Cucurbita pepo)など、多くのウリ科の植物が栽培されている。これらは、イプやスイカも含めて、畑や庭から逸出したものが散発的に帰化することがあるという。
*「香りの良いイプ」という意味
**すでに絶滅した同名のウリ類に似ていることに由来する
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