Manu-o-Kū (Gygis alba)
愛くるしい目、純白の羽、愛嬌あふれる仕草と華麗に空を飛ぶ姿は、きっと多くの人が一目見ただけでファンになってしまうだろう。筆者が、エレパイオとともに特に好きな鳥である。
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日本語名 | シロアジサシ(白鰺刺) |
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ハワイ語名 | Manu-o-Kū |
英語名 | White Tern |
学名 | Gygis alba |
分類 | カモメ科(Laridae) |
その他 | ハワイ在来種(indigenous) ホノルル市鳥 |
分布
I
太平洋、大西洋、インド洋の熱帯と亜熱帯の地域に分布。ハワイの主要6島では、オアフ島のホノルル都市部のみに生息する。北西ハワイ諸島には多く生息する。Hawaii Audubon Societyのジャーナル『ʻElepaio』2007年5月号によると、約15,000組のつがいが北西ハワイ諸島に生息しているそうだ。
オアフ島での繁殖は、1961年7月15日にココ・ヘッド(Koko Head)で一組のつがいと卵一個が確認されたのが最初。その後、ホノルルの都市部に広がり、250箇所以上の繁殖地がカピオラニ公園(Kapiʻolani Regional Park)やイオラニ宮殿(ʻIolani Palace)などにできた。マウイ島でも目撃されたことがあるが、かの地で繁殖しているという記録は、今のところないそうだ。
形態
全長30cm、翼開長70cm。羽は雪のように純白で、目は濃い青、くちばしは黒、くちばしの根元は濃い青、足は濃いグレーで淡い黄色の水かきがある。 目の周りの黒い羽毛の輪が、くるりとしたまなこという印象を鮮烈にあたえる【写真1】。
雛は白色または灰色で、白色と灰色が交じっている個体もある【写真2】。若い鳥は翼や背中に明るい茶色の羽がみられる【写真3】。
鳴き声
「グエッ、グエッ、グエッ、グエッ」(2013年10月、ホノルル市内)
生態
魚を捕るために海面に飛び込むが、潜ることはない。主に捕食性の大きな魚によって海面近くまで追われたヒメジ類の幼魚やトビウオを捕まえる。そのために、乱獲による大きな魚の減少が、マヌオクーの減少の一因になるかもしれないと言われている。捕まえた子魚を横向きにくわえて、最大で12匹も陸に持ち帰ることができるそうだ。
巣は作らずに、樹木の棚状の部分や枝などに卵を一つだけ産んで抱卵する。北西ハワイ諸島では、地面に卵を産むこともある。多くの個体は2月から9月までをハワイで過ごすが、オアフ島で通年過ごすつがいもいる。ホノルルのマヌオクーは、特にバニヤン、モンキーポッド、マホガニー、ククイ、アイアンウッド、キアヴェなどの木をすみかにする。
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古代の水先案内役
マヌオクーは、陸上が生活のベースであり、朝に海に魚を捕りに出かけ、夕方には陸に戻ってくるため、昔は船乗り達の便利な案内役だったという。朝はマヌオクーや同じく陸ベースのアジサシであるノイオ(ヒメクロアジアシ)が飛んでくる方角に、また夕方は彼らが飛んでゆく方角に陸があることがわかるからである。ホエールウォッチングなどで船でワイキキ沖に出ると、魚を探して飛んでいるマヌオクーをみることができる。
ホノルル市の鳥
2007年4月2日、マヌオクーは『ホノルル市の鳥』になった。当時のホノルル市長、ムフィ・ハネマン氏の宣言書には、マヌオクーが市の鳥にふさわしい理由として、この純白の鳥が自然の美しさ、清らかさ、穏やかさ、安らぎを象徴していること、ハワイの主要な島々ではオアフ島のホノルル市のみで暮していること、古代ポリネシア人たちの航海案内役であったこと、世界平和と親善のシンボルであることなどが挙げられている。
カピオラニ公園では、『ホノルル市の木』であるウィルヘルミナ・テニー(レインボーシャワーツリー)の上を飛ぶ『ホノルル市の鳥』マヌオクーを見ることができる【写真6】。
名前の由来
「クーの鳥」と訳されることが一般的。クー(Kū)とは、ハワイの四大神の一柱のことで、戦・海・山の神。「平和の鳥」と訳している書物もある。また、オフ(ʻohu)という単語との関連も指摘されているという。ʻohuには霧、蒸気、山にかかる薄い雲などの意味がある。本種の優美な飛翔の姿や、ときには不意に急旋回したり急降下する軽やかな動きを、霧や雲が風に吹かれて漂う様子に例えたのだろうか。
天空の妖精
英語名のWhite Ternは、「白いアジサシ」という意味。他に、Fairy Tern(妖精アジサシ)と呼ばれることもある。純白でチャーミングなこの鳥にふさわしい名前である。
筆者は2003年から数年間、ダイヤモンドヘッドの北隣にあるカピオラニ・コミュニティ・カレッジ(Kapiʻolani Community College)に通っていた。校内では度々、人を恐れないマヌオクーを木の上などで見ることができたので、やがてその写真を撮るようになった。筆者がハワイで野鳥の魅力にのめり込むきっかけになった、ひときわ思い入れが深い鳥のひとつである。
動画
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