Palila (Loxioides bailleui)
ハワイ島のマウナ・ケア(Mauna Kea)に生息する希少なハワイミツスイ。現在生き残っているハワイミツスイ類では最も大きい。またハワイの主要な島々では、太くて短いフィンチタイプのくちばしをもつハワイミツスイ類の唯一の現存種である。
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日本語名 | キムネハワイマシコ |
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ハワイ語名 | Palila |
英語名 | — |
学名 | Loxioides bailleui |
分類 | アトリ科(Fringillidae) |
その他 | ハワイ島固有種(endemic) 絶滅危惧種(endangered) |
分布
E
ハワイ島固有種。ただしカウアイ島とオアフ島では本種の半化石が見つかっているので、大昔にはこれらの島々にも生息していたことになる。今日の分布域は、マウナ・ケアの標高2,000~2,750m、南西から北側にかけての裾野に限られる。マーマネとナイオの森にすむ。以前はコナ(Kona)の高地とフアラーライ(Hualālai)にも生息していた。現在の分布域は、元の分布域の10%しかないという。
形態
全長19cm。オスとメスは体の色が異なる。オスは頭、胸、翼が黄色で、背中は灰色、下面は明るい灰色、目先は黒い。メスは全体的にややくすんだ色で、首と胸と部分の黄色が淡く、目先は灰色。オスもメスもくちばしは太くて短く、マーマネの豆果を割るのに適している。足は黒色。虹彩は濃い茶色。未成鳥はメスに似ているが、2本の翼帯がある。
保護色
一見すると黄色い派手な鳥だが、実際にマーマネの木にいるのを見ると、パリラの体色がマーマネの黄色い花と灰色がかった葉に見事に溶け込み、保護色であることがわかる【写真1】。
パリラに似た鳥たち
パリラの生息地にはハワイ・アマキヒ、メキシコマシコ、キマユカナリア、キンノジコなどの、パリラに似た鳥たちが生息する。しかしこれらの鳥たちよりもパリラは一回り以上大きく、背中の灰色が目立つため、わりと簡単に識別できる。
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鳴き声
さえずりは、カナリアのそれに似てメロディアスでとても複雑。声質は柔らかい。朝と夕方に多くさえずる。地鳴きは、2~3音の音程が上がるスラー。パリラという名前はこの地鳴きに由来するらしい。パリラを探すときに、多くの場合はまずこの地鳴きによってパリラの居場所を知ることができる。
マウナ・ケアに生息するアマキヒの個体群は、しばしばパリラにそっくりな地鳴きを発することがある。これはパリラの鳴き真似と思われる。
生態
マーマネの若い種子が第一の食物。緑色の若い豆果を引きちぎって、豆果をくわえて近くの木の枝に移動する。そこで豆果を足で器用に押さえ、くちばしで引き裂いて中の種子を取り出して食べる。この作業は、数分にわたって行うことも珍しくない。マーマネの豆果には有毒なアルカロイドが含まれているが、パリラはアルカロイドへの耐性を持てるよう独自の進化を遂げたようである。豆果の他にマーマネの花や若葉、虫、ナイオの花や果実なども食べる。5羽くらいの小さな群れで行動することが多い。
繁殖期は2月から9月。マーマネの木に小枝、草、樹皮などで巣を作り、2個の卵を産む。卵は白色で赤褐色の斑点がある。
深刻な絶滅の危機
上記のように、パリラが生きていくためには、食料としても営巣場所としても、マーマネが必要不可欠である。ところが、マーマネを好物とする野生のヒツジが食べてしまうことによって、マウナ・ケアのマーマネの森は大幅に減少してしまった。そのため、この木に生存を委ねるパリラも減少を続け、現在は深刻な絶滅の危機に瀕している。さらに近年の干ばつも、パリラの減少の一因となっているという。この干ばつが、気候変動のひとつの表れとして今後も続くのかどうかはわからないらしい。
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