Kōlea (Pluvialis fulva)
ハワイで最も一般的に見ることができる渡り鳥。毎年8月の後半、数千マイルも離れたアラスカやシベリアから、ハワイを含めた南太平洋にやってきて冬を過ごし、4月にまた北に帰ってゆく。ある研究によると、コーレアのアラスカ~ハワイ往復旅行は、少なくとも12万年前から続いているという。とほうもない昔からのカマアーイナ(kamaʻāina、ハワイ在住者)なのだ。
スポンサーリンク
日本語名 | ムナグロ(胸黒) |
---|---|
ハワイ語名 | Kōlea |
英語名 | Pacific Golden-Plover |
学名 | Pluvialis fulva |
分類 | チドリ科(Charadriidae) |
その他 | 渡り鳥(visitor) |
分布
V
ハワイでは、冬鳥として主要6島すべてでみられる。ゴルフコース、学校の構内、公園などの開けた場所にいるほか、渡り鳥には珍しく、カウアイ島のコーケエ(Kōkeʻe)やマウイ島のハレアカラー(Haleakalā)などの山中で見られることも多い。
形態
全長27cm。ハワイに渡ってきてすぐのコーレアは、黄色っぽい茶色のいわば地味な感じだが、季節が進むにしたがって、羽は斑のある金色に、胸部は日本語名のとおり黒色に生え変わる【写真1】。ハワイではいささか派手な感じがするが、これが繁殖地であるアラスカやシベリアでの保護色である。ハワイ滞在終盤である晩冬と初春は、長旅の体力を付けるためにたくさん食べ、この頃には体重も秋の倍ほどになる。
渡り
夏の間はシベリアやアラスカ西部のツンドラ地帯で過ごし、8月の終わりに、まず成鳥が南に向けて旅立つ。幼鳥は数週間遅れて出発する。しかしながら自然というものはまことに厳しいもので、幼鳥のうちの8割もが海で命を落としてしまうそうだ。運良くハワイにたどり着いた幼鳥を次に待ち受けているのは、縄張り争いである。毎年同じ場所に縄張りを持つ習性があり、20年以上も同じ場所に戻ってきたという個体の記録もある。ただし、コーレアの平均寿命は5~6年程度である。
コーレア社会では、成鳥がまず前年と同じ場所をとるため、初渡ハの幼鳥は、空いている場所を探すのに苦労する。縄張りを確保できなかったコーレアは、ハワイで少し休憩したあと、はるかオーストラリア、ニュージーランド、メラネシアやミクロネシアまで飛び立っていく。そういった初渡りの幼鳥でも、広大な太平洋に浮かぶ大陸や島へピンポイントで飛んでいくわけだが、この幼鳥のナビゲーション能力は、今日でも鳥類学のミステリーのひとつであるという。
スポンサーリンク
人をハワイに導いた鳥?
ポリネシア人の伝承にコーレアが度々出てくることから、ポリネシア人はこの小柄な渡り鳥に導かれながら万里の波涛を越え、やがてポリネシアの島々のいくつか——ハワイ諸島も含めて——にたどり着くことができたのではないかという考えもある。
時代が下って18世紀、幻の「南の大陸」や「北西航路」を探し求めて太平洋を航海し続けていたジェームス・クック(1728–1779)の船団も、南のタヒチや北のベーリング海でコーレアを目撃している。クック船長は、「この渡り鳥が巣を作る陸が北のどこかにあるということなのか」という意味のことを手記に書いている。
守り神
コーレアは、昔からハワイ人にとってアウマクア(ʻaumakua、守り神)のひとつであり、諺、フラ、チャントにも度々この鳥が登場する。またある伝説では、コーレアはハワイの癒しの神であるコレアモク(Koleamoku)の生まれ変わりだとされている。
動画
コーレアが地面から餌となる虫を探して食べる様子。2014年11月にホノルル市内で撮影。
ちいさい秋、見つけた!
筆者がハワイで野鳥に興味を持ったもっとも初期に観察し、写真を撮った鳥が、マヌオクー(シロアジサシ)とこのコーレアである。そのため、個人的にとても思い入れが深い。筆者が勤めるオフィスの隣に芝生の公園があり、毎年夏の終わりに1〜2羽のコーレアがここを縄張りにしている。8月最初のコーレアを見かけるたび、「ちいさい秋、見つけた!」とつぶやくのが毎年の決まりになっている。
作成日: