ʻAlae ʻula (Gallinula chloropus sandvichensis)
北アメリカやユーラシア大陸に生息するバンの亜種。
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日本語名 | バン(鷭) |
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ハワイ語名 | ʻAlae ʻula、ʻAlae |
英語名 | Common Moorhen, Hawaiian Gallinule |
学名 | Gallinula chloropus sandvichensis |
分類 | クイナ科(Rallidae) |
その他 | ハワイ固有亜種(endemic subspecies) 絶滅危惧種(endangered) |
分布
E
バンは、オーストラリア区以外の温帯から熱帯にかけて世界中に分布する。太平洋の島々では、パラオ、マリアナ諸島、そしてハワイ諸島に分布する。ハワイの個体群は固有亜種に分類され、カウアイ島とオアフ島に生息する。以前はマウイ島、モロカイ島、ハワイ島にも生息していたという。これらの島々では放鳥が試みられたが、ことごとく失敗したという。
形態
全長33cm。オスとメスは同じ色。体全体が濃い灰色。体の横側と尾に白い縞があり、横側の縞は白い点線のようにみえる。額とくちばしの根元は鮮やかな赤色。くちばしの先は黄色で尖っている。くちばしはニワトリのそれに似ている。足は黄色でとても大きい。踵(かかと)の上は赤色で、まるで赤いガーター(靴下留め)をつけているようにみえる。未成鳥は緑色がかった茶色で、くちばしと足はくすんだ色。
鳴き声
「ケッ、ケッ、ケッ、ケッ」や「ケケケッ」と鳴く。ハワイには、くちばしと額板が白いアラエ・ケオケオというバンもいて、生息地を共有している。鳴き声も似ているが、アラエ・ケオケオの鳴き声よりも本種の鳴き声のほうが音がシャープで音程が高い。本種の鳴き声は、凶兆と信じられている。日本では笑い声に例えられ、「鷭の笑い」と言われる。
生態
湖沼、湿地、貯水池、養殖池、カロ(タロイモ)畑などに生息する。軟体動物、水生植物、草を食べる。主に葦の上に巣を作り、6~9個の卵を産む。卵は22日で孵化する。
アラエ・ケオケオよりも警戒心が強い。アラエ・ケオケオは、開けた水域に浮かんで泳ぐ姿がよくみられるのに対して、本種は草の中にいたり、水辺の茂みをひっそりと歩いていることが多い。ただし、泳ぐことがまったくないわけではなく、むしろ水面をたくみに泳ぐことができる。
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名前の由来
属名のGallinulaは、「小さなメンドリ」という意味。種小名のchloropusは、「緑色の足の」という意味。
ハワイ語のアラエ(ʻalae)は、バン(鷭)の総称だが、一般的には本種のことを指す。ただし、アラエ・ケオケオのことを「ʻalae bird」呼ぶハワイの住民も多い。ウラ(ʻula)は赤という意味。本種のもっとも目立つ特徴である、真っ赤なくちばしと額板に由来する。ケオケオ(keʻokeʻo)は白という意味で、つまり、アラエ・ウラは「赤い鷭」、アラエ・ケオケオは「白い鷭」となる。
アラエは、ハワイの地名にも見られる。例えば、ホノルル市内のワイアラエ(Waiʻalae)という地名は、直訳すると「水鷭」という意味になる。
絶滅の危機
絶滅危惧種に指定されている。1982年のState Division of Forestry and Wildlifeによる調査では、カウアイとオアフの両島あわせてわずか194羽の生息しか確認されていない。前記の通り警戒心が強く、生態が未だ謎に包まれているため、今日のはっきりとした生息数はわかっていないという。外来の肉食哺乳類が深刻な天敵となっている。
火の鳥伝説
アラエ・ウラには、火をハワイの人々にもたらしたという伝説がある。マウイ島のアラエ・ウラが、人々が火の存在を知らないことを哀れに思い、神々の聖地から燃える枝を口にくわえてマウイ島に持ち帰り、人々に渡した。そのときに、白色だったくちばしと額が火で燃えてしまい、今もそうであるように真っ赤になったという。
ほかに、アラエ・ウラが火の起し方を人間に教えるという伝説もある。本種の真っ赤なくちばしと額を見て、古代ハワイ人は火を連想したようである。一部のハワイ人は、本種をアウマクア(ʻaumakua、守り神)と考えていた。
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